2016年1月30日土曜日

猫たちの平和な日々


その窓からは、隣の桜や若葉の繁りの深き緑が朝日の中で艶げしく光っている。

その下には小さな池があり、その縁のかなりの部分が薄緑の葉におおわれ、

河骨こうほねの黄の花はまだ目につかないが、数本の花菖蒲が紫や白の

花盛りを、その鋭い緑の剣のような葉の叢生から浮き上がらせていた。

出窓の水滴が朝日がその強さをますに従い、一つまた一つと掻き消えていく。

その数滴の水玉の間を縫うように、ゆっくりと室内へ這い上がって来ようとして

いる一匹の玉虫にチャトは目をとめた。緑と金に光る楕円形の甲冑に、あざやかな

紫紅の二条を走らせた玉虫は、触覚をゆっくりと動かして、糸鋸のような足を

すこしづつ前へ移し、その全身に凝らした煌びやかな光彩を、時間のとめどもない

流れのなかで、その媚態とゆったりとした動きを保っていた。

始めは目はじにあったその小生物は緩やかな時間の流れながらチャトの全意識を

とらえるまでに大きくなり、チャトの心はその玉虫の中へ深く入っていった。

虫がこうして燦然たる姿を、ほんの少しづつチャトのほうへ近づけてくる、その全く

意味のない進行は、彼に、容赦なく現実の局面を変えていく時間と言うものを、

どうやって美しく燦然とやりすごすかという問いを投げかけている様でもあった。

こいつを生かすべきか、その鎧もろともはじき飛ばすべきか?

この小さいながらも自然の美麗な光彩を放って、しかも重々しく、あらゆる

外界に抗うほどの力を持っているこの虫をどう扱うべきか、チャトは思い

巡らしていた。

そのような時、ほとんど、周囲の木々の茂りも青空も、雲も、朝の光りさえ

すべてのものがこの虫をめぐって仕え、世界の中心、世界の核をなしているような

感じを抱いた。

 
チャトは、猫族の中では、中々に、博識である。

人間と同じで、文科系は、どうも喧嘩はに弱いが、その分、

結構、人間世界の話も含め、良く知っている。

そのチャトが、ライやレトに色々と講釈をしている時の

話である。

チャト曰く、

「猫の耳は、全てを語っていることを覚えておきなよ。

猫族は、結構視力が弱いから、その聴く力の高さで、行動力

を高めているんだ。ライは良く夜出かけるけど、危ないぜ!

また、自分の状況を相手に伝えるのにも、使って居る。

ハナコがよくやる耳を大きく見せようとするのは、相手への

威嚇だけど、私、あなたに負けましたと言う時は、耳を伏せない

と徹底的に、やられるよ!」

「俺も含めて母親が直ぐに居なくなったからあまり教わっていないと

思うけど猫のひげは、その触覚の高さで、暗闇や狭い場所の行動を

助けているんだ。ひげは、大切な重要な行動センサーって訳。

ライが良く足裏、足横などを良く舐めているけど、足裏などの

ひげで、歩きながらも使っているのよ。

猫族にも、人間と同じ様に、性格的なものがあるね。

我が家では、大胆系( 社交的、自信満々、楽天的)は、ライだし、

レトやナナおばあさんは小心系(臆病、非社交的、神経質)かな。

それに、毛色にって概ねの猫の性格があるんだ。

例えば、茶トラは、甘えん坊、本当は怖がり屋だが、弱みを見せたくなくて

強気に出たり、友好的になったりする。これって、俺にあうな!

変なところで、感心しているチャトだが。そして、我々の大先輩である

トトのような三毛猫は、気分屋でプライドが高い。

確かに、ママにべったり甘えていたと思うと直ぐに離れる。メスらしい

タイプかも。3丁目の白猫は、気が強く、頭も良く、時に神経質で、

全般にクールなタイプよな。一同、夫々思い当たる点があるらしく

同時に納得の態度。街の下に居るキジトラが、一番、人間と仲良く

なるタイプらしいけど、この辺では、ほとんど見かけないようだ。

更に、チャトの講義は続くのだが、皆さん、お疲れのようで、思い想いの

格好で、何とか薄目を開けて聴いているフリだが、多分、

馬の耳に念仏、猫の耳に、涅槃経かも知れない。

既に、仏壇のある部屋には、西陽が5人の猫の背中を包み、明るい光

の手が手もみをするが如く、優しく輝いている。

その周りを時間がゆるりと流れて行く。

 
その4

水を切る船路がきらめく銀盤のしじまを一直線に切り取り、その白き階が

黒天に浮かぶ満月の神々しくも光映える姿をを揺らし、それもやがて白く

光る湖面の中に消えていく。月の光の外れでは、湖水がただ茫漠として

空の黒さの中に沁み込んでいる。沖島、八幡山の織り成す黒き線と面の

造形が白き光の輪の中に浮かぶ。

全てが静寂の中、月光の突き刺すような光に困惑しながらも、大きく

湾曲する白き線と限りなく続く漣、百数十本の松、それに迫る山の端の

なだらかな線が一幅の墨絵のごとき趣きを持って眼前に広がっている。

目を転じれば、月の白き光を受けて、比良の山並は紅と緑の山裾を長く

見せ、湖の琵琶を奏でる調べの中にあった。

今いるここは奥津城なのか、ふとそんな思い浮かぶ。

月はあきらかで、風が木々の梢に吠えていた。梟が鳴き、松の梢の

ざわめきが、僅かに呑んだ酒のせいかほてった彼の耳朶に、死んで言った

ものの声、悲壮な葉叢を風になびかせている木々のざわめきを伝えた。

 
その声は酷く寂しげだった。むしろ、悲しい悲鳴で叫んでいた。

青い空と刷毛で引いたような白い雲の中に、その声は吸い込まれていく。

赤と黄色に色づいた庭庭の木々の葉を揺らしているようでもある。

我が家の猫族も、何時とはなしに不安げである。

まずは、その声に反応したのが、ナナである。

チャトと話をしているが、チャトは呑気に言う。

「そのうちに止めるさ?でも、あの声は犬族の声だぜ。ママは、何処かで

猫が虐められていると言ってるけど?」

「そうね、猫族だったら、あんなにシツコク泣かないわね」

ママがとうとう、ご出陣である。

「何時まで、自分ちの猫を泣かしておくの!チョット見てくるわ」

と、言ったまま、既に、1時間ぐらい経った。
 
しかし、我が家のナナを除く4人は、そ知らぬ顔、我関せずを決め込むようである。

突然、一陣の風が舞い上がり、玄関の前のゴールドクレストの緑を

揺らしながら、脱兎の如く黒い影が通り過ぎる。ママである。

「パパ、チョット来てよ!大変なことになってるの」

主人が2階の書斎からノンビリ気味に顔を出す。

またか!の顔であるが、それを隠しつつも、間延びした様子で、

「何があったの?」

「斜め前のお宅に猫がズーと鳴いているから、注意しに行ったのよ!」

「そうしたら、猫ではなくてね」。

と、その興奮を抑えようとしているのか、チョット一息入れている。

「そこの柴犬が、昨日は、雨の中、びしょびしょになって餌もないような

状態でね、鳴いているのよ。隣の奥さんが見るに見かねて、その犬を

世話していたって訳。私も、心配だし、2人がかりで、身体を拭いたり、

餌を上げたんだけど、、、、、、、」

ママは、心配なのか、ふと目を逸らして、外を見る。外はまだ、大粒の

雨がその雨筋を残しながら、まるで、交互に登場する舞台俳優の如く、

青空を見せては、また、それを隠すが如く雲を見せ、降ってくる。

「それで、どうしたの?」まだ、気の乗らない主人である。

猫族5人も、薄目を開け、ママと主人の様子を窺っている。

とりあえず、犬族の話であれば、俺たちは関係ないか!の雰囲気。 

やがて、ママが主人を無理やり引っ張っていく形で、2人が出て行った。

なんでもクビを突っ込みたいライが、その後を追う。

3人は、柴犬を雨のかからない奥の方に移動させ、そこで犬小屋を綺麗にし、

雨よけのビニールをかけている。

ライもその柴犬に近寄って、

「あんた、見たことのない顔だね。何時ここにここに来たのよ?」

「1週間ほど前よ。私の主人がここを買ったから一緒にね」

「私も歳なんで、後ろ足が動かないし、目もあまり見えないの。あんたは、近くに

住んでるの?昨日は雨も強いし、風も吹くし、ここって最悪ね」

「最悪なのは、お前の飼い主だろうが!」

ライ、自分たちが貶された様で、チョットお怒りの様子。

「お前ところの飼い主は、どこに行ったのよ?全然、姿が見えないけどさ」

「仕事とかで、1週間ほどいないの」

「薄情なやつだな。お前みたいな介護の必要な老犬を置いて行くなんてさ」

「人間だってそうじゃない。親を世話せずに、他のところに追い出すような

話を良く聞くわ」 

陽が既に、このガレージを白く光らせ始めていた。

少し先の我が家の2階からは、ことの成り行きを見たいのか、単なる

興味心からなのか、ナナがこちらを見ている。

その犬、実はメスなのだがタイチという名がついていた、タイチは昨日から

食べていなかったようで、ママが慌てて持ってきたドライフードを同じく、

慌てながら、食べている。もう、ライの存在すら忘れた要に、ひたすら、

食べている。

人も犬も、猫も、食べることを避ける訳には行かない。

これは、生き物にとって、必要不可欠な行為なのであるから。

暖かさが、1匹の犬と1人の猫に、僅かな時間であるが、安息を与えるが如く、

包み込んでいる。

ここにも、また、しばらくの小さな幸せが寄って来た。

幸せに、大きいも小さいもないんだが、人間は直ぐに、それを考える。

不幸せなことでもある。

翌々日、ライが何時もの如く、町の様子を見回っていると、身体を丸め、

静かに寝ているタイチを見た。

何時もは、犬猿の仲である猫族、犬族であるが、今日は、構わずに行こう

とするライである。

長い影を地面に落としながら、ゆっくりと過ぎ去る。 

家に戻ると、主人とママが、なにやら、興奮しながら、喋っている。

「でもね、あのワンちゃんも可哀相よ!目が見えないのに、外に

おっぽりなしになって、餌もほとんど食べてなかったみたいよ」

「ふーん。そうなのか」

ママは主人の反応があまりにも、鈍いので、更に、怒りのテンションは

あがっていく様だ。我が家は、どうも、息子を含め、瞬間湯沸かし器の

気質があるようで、今は、主人が冷凍状態であるが、何かのきっかけで

直ぐに、ママと主人の激論が始まる。

人間とは、不思議なもので、猫族は、自分の縄張りが荒らされそうなとき

には、似た状態になるが、普段は、ねた状態である。

2丁目の三毛さんも言っていたが、人間は気分の高低が激しすぎる。

クロネコさんに言わせれば、「よう付き合わんわ!!」と一言で終わる。

そんなことを考えているとナナおばさんが2階から降りてきた。

俺をジローとみてから、ママと主人が大声を出している傍を何事も

ないか、の如く歩いていく。

「貫禄だな!!」

しかし、かのお犬様は、まだ、泣いているようなので、ママがスタスタと

玄関のテープを持って、外に出たようである。

主人は、テレビなるものを1人で観ながら、ニヤニヤしている。

あの激論はどこに消えたのだ?

横で、ナナがノンビリとそのデカイキ口を開けて、缶詰のご飯を食べている。

戦争と平和がそこにある。

平和は、味わう、嗅ぐ、である。

それ以外、あまりも無意味だ。「聞くこと、観ること、触ること」。

俺は、少し違うな!チャトが年寄り風に一言。

「平和なんて空気みたいなものさ。どんな感覚もないのよ」
 
 
 
 
ある日、レトは、初めての経験をした。それは、レトが気の弱い性格で
あったからなのか、本当に経験したのか、良く分からない。
多分、これからもそうであろう。
レトとライは兄妹であるが、全然似ていない。ある晩、道路に捨てられて
いた2人を我が家に連れてきたのが始まりである。メスのせいか、ライよりも
大分小さく痩せていた。そして、尻尾は鍵型であった。このような猫は、幸運を
引っ掛けてくると言うので、結構珍重されるのだが、レトの場合は、凄い
人間不信がある。主人の言うには、「生まれて直ぐに、尻尾をこんな風に
曲げられたから人間不信なんだ、と断言しているが、なんにでも、直ぐに
断言する主人の性格を知っているママは、かなり懐疑的である。
いまは、信じるものはママのみと決めているようで、何かあるとママの
足元に隠れる。もっとも、レトがママを信じるのは、我が家に来て少し経った
ある日、風呂場で遊んでいた時に、足を滑らせ風呂の中に直接ダイビング。
これは、ママがたまたま拾い上げて、助けた時からである。
ともかくうるさいオバサンとなったレトであるが、もしかしたら、我が家で
一番長生きするのでは、ともっぱらの評判である。黒に縞のある容姿は、決して
美人とは言えないが、ぽっかり開いた眼は我猫族では一番大きい。この眼に
負けるオス猫がいるかもしれない。
 
ことは、2日前に始まる。主人が書斎から降りてくると、早速、ママが
「これ読んだことある?」
「なに?猫町、荻原朔太郎?荻原って、詩人じゃなかったけ」
「チョット不気味だけど、面白いのよ」
「例えばね、
私は悪夢の中で夢を意識し、目ざめようとして努力しながら、必死にもがいている人
のように、おそろしい予感の中で焦燥した。空は透明に青く澄んで、充電した空気の
密度は、いよいよ刻々に嵩まって来た。建物は不安に歪ゆがんで、病気のように瘠やせ
細って来た。所々に塔のような物が見え出して来た。屋根も異様に細長く、瘠せた鶏
の脚みたいに、へんに骨ばって畸形に見えた。
「今だ!」
と恐怖に胸を動悸どうきしながら、思わず私が叫んだ時、或る小さな、黒い、鼠ねず
みのような動物が、街の真中を走って行った。私の眼には、それが実によくはっきりと
映像された。何かしら、そこには或る異常な、唐突な、全体の調和を破るような印象が
感じられた。
瞬間。万象が急に静止し、底の知れない沈黙が横たわった。何事かわからなかった。
だが次の瞬間には、何人なんぴとにも想像されない、世にも奇怪な、恐ろしい異変事が
現象した。見れば町の街路に充満して、猫の大集団がうようよと歩いているのだ。
猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。そして家々の窓口からは、
髭ひげの生はえた猫の顔が、額縁の中の絵のようにして、大きく浮き出して
現れていた。
戦慄から、私は殆ほとんど息が止まり、正に昏倒するところであった。
これは人間の住む世界でなくて、猫ばかり住んでる町ではないのか。
、、、、、、、、、
さもなければ狂気したのだ。私自身の宇宙が、意識
のバランスを失って崩壊したのだ。
私は自分が怖こわくなった。或る恐ろしい最後の破滅が、すぐ近い所まで、
自分に迫って来るのを強く感じた。戦慄が闇を走った。
だが次の瞬間、私は意識を回復した。静かに心を落付おちつけながら、私は今
一度目をひらいて、事実の真相を眺め返した。
その時もはや、あの不可解な猫の姿は、私の視覚から消えてしまった。
町には何の異常もなく、窓はがらんとして口を開あけていた。往来には何事もなく、
退屈の道路が白っちゃけてた。猫のようなものの姿は、どこにも影さえ見えなかった。
そしてすっかり情態が一変していた。町には平凡な商家が並び、どこの田舎にも
見かけるような、疲れた埃っぽい人たちが、白昼の乾かわいた街を歩いていた。」
「中々に、面白いね。なんか、下の街を書いているようにも見えるけど。」
そう、高齢化はこの近くでも、差し迫った問題なのだ。
何時、路地や通りを歩いても、無人の乾いた世界である。
猫族の町があっても、不思議ではない。
ない方が不思議なのである。
ハナコは主人のベッドの上で寝るのが好きだ。
野良猫として我が家に来た時、ハナコとノロを受け入れたのは主人であり、
ライやレトの古株に虐められた時に、助け舟を出すのが主人であったから
かも知れない。もっとも、黒と茶色の斑の様な色合いに白い下腹や足から
受ける印象はか弱さが感じられるが、ぞっこん結構しぶとい女だ。
でも、今見える寝姿は、中々に可愛い、と主人は思っている。前足を
少し縮めるように九の字にまげて、後ろ足には長い尻尾が捲きつけるように
絡んでいる。やや丸める様に横になった斑の背中に白いおなかが上手く
全体の色バランスを取っている。白さが優る顔を斜めに伏せ、時々動かす
耳は背中の斑と同じだ。やや上向きの鼻がこじんまりと伏せた目元に
緩やかにつながっている。他の場所では、ライやレト、たまにはナナの
急襲に備えてどこか緊張感が伴っているが、今は体全体が弛緩し、
安心感が全体をおおっている。その寝息にあわせ、白と斑の一部がゆっくり
と上下している。今、彼女はどんな夢を見ていることか、ノロとの逢瀬か、
満月の下で大勢の猫と戯れる情景か、その顔は穏やかな空気感を
四方に放っている。
 
レトが、ぶらりと街の中を回っている。
少し坂を上がると琵琶湖が曇り空の下、幾つかの波状的な縞模様を
見せながら、やや黒ずんだ水面を見せている。
ゆっくりと歩を進めると、車から見える世界とは、違う世界がある。
既に、緑の小さな手のような葉は、その色を黄色に変えつつある。
その色は、下から少しづつ薄い緑となり、葉の中で、緑から黄色への
変化し、一番上では、黄金色の盛りである。
紅葉と言う時の流れが、彼方此方で、木々の姿を変えつつある。
空き地には、以前からその寂しさを見せつつ、一本の楓がある。
その楓も、紅い衣装を着こなすようになり、一部の葉では、
既に、老いかけている。
更に、近くの小山、家々の庭木には、赤や黄色のパッチ模様が、
見え隠れしている。それらを少しでも、和らげようとするかのように、
菊やススキの白、桜草のピンクが彩りをとっている。
そんな風情に引かれたのか、何時もの街をゆっくりと何気なく出て行く。
 
そして、数分も歩いた頃、突然、あのママの言っていた街をみた。
何時もは、行かないからどのあたりを歩いているのか、レトには分からない。
大きなガレージの所に、2匹の猫が居た。レトは、その不可思議な雰囲気に
チョット後ずらしをした。
気は弱いが、好奇心が人一倍強いレトである、
更に、少し頭を下げ、迎撃体制をとりつつ更に進む。
レトの身体全体に、猫族の好奇心と怒りと者珍しさが幾重に絡んだ視線を
受けつつ、洋風館の前を通り過ぎる。
実は、レトは、既に、迷子状態。今自分がいる場所が我が家とどの程度
離れているのか、皆目不明。
そして、洋風の窓や2階の窓から猫族の目、また、目である。
レトは背中に、ぞっくとするものを感じた。
来ては、いけない場所に入り込んだのだ。
ともかく、走った。走る以外、この恐怖から逃れられないのだ。
景色が後ろにドンドンと流れて行く。
心臓が早鐘のように、打ちまくっている。
やがて、大きな瓦屋根のある家の傍にいた。見慣れた光景でもある。
今のは、なに?レトは、その目で、猫族の町を見たのだ。
しかし、この経験は、レトの心の深いところに埋められることになる。
「レト、今日はご飯食べるのが、すくないね!」
ママが不思議そうな顔で、レトの顔を見ている。
 
 
 
 

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